鐘崎特設マーケットで「魚の美味しさの秘密」を探る~9月25日レポート~ 最終更新日:2021年9月25日 (ID:2707) 印刷 こんにちは、パパレポーターの久田です。今回は、鐘崎漁港で9月末まで開催中の「鐘崎特設マーケット」を取材しました。 「むなかたタウンプレス」7月15日号を見ていると、「鐘崎漁港特設マーケット開催!!」の文字が。さらに上八交差点(環状交差点)付近の御製広場という海辺のロケーションで開催ということもあり、がぜん興味がわいてきました。 上八交差点:県内で2番目、市内で初めてできた環状交差点(宗像市上八) さらに、宗像漁業協同組合に急速冷凍機械「凍眠」が導入されていると知り、同組合代表理事組合長の桑村勝士さんにお話を伺いました。 今回取材した中で、3つのことをお伝えします。 下記リンクをクリックすると、該当箇所に移動します 鐘崎漁港ってどんなところ?アナゴとの関係は? 設備投資と組合全体でのマーケテイング戦略 漁師の奥様直伝!魚の美味しい解凍方法 鐘崎漁港ってどんなところ? 宗像市岬地区にあり、車で上八の環状交差点を鐘崎方面へ行くと海が見え、やがて漁港へと到着します。 環状交差点の標識 車の流れに注意してぐるっと回ります 個性豊かな看板がお出迎え 看板に書いてあるように、すぐそこに海が 海が広がっている開放的な風景 鐘崎漁港は福岡県内のアナゴ漁獲高NO.1を誇る漁港で、巻網漁(まきあみりょう)、イカ釣り、トラフグの延縄漁(はえなわりょう)などを行っています。主にアジ、サバ、イワシ、タイ、アナゴ、トラフグなどが獲れます。 大きな漁港に育った「地理的・歴史的背景」 砂浜はあるものの、他の漁場に比べて漁業に適する天然の入江や磯場、リアス式海岸がないため、決して恵まれた漁場ではなかったようです。 そのため、人々は古代より朝鮮半島から対馬、沖ノ島近海まで漁るなど沖合にいくことに慣れており、海を拠点に生活した人たちは、宗像族の鐘崎海人(かいじん)と呼ばれています。 また、博多から京都への海路、瀬戸内海から関門海峡を回っていく海路等の中継地点として、外からの人が入って交流が盛んな地でもありました。 鐘崎は西日本の海女発祥地としても知られ、能登半島や宮城県にも「鐘崎かまぼこ」といった鐘崎の名前が伝わっていて、鐘崎海女の文化が全国に影響を及ぼしていたことがうかがえます。毎年9月になると、宗像漁協役員の方々が山口県玉川町の角島に墓参に行ったりと、海女文化の伝承地と今でも交流があるそうです。 さらに、昭和40年頃の高度経済成長の波に乗り、思い切って船に設備投資。その船で沖合まで漁に出ることで漁獲量は拡大し、今の大きな鐘崎漁港へと発展しました。 アナゴとの関係は? 今ではすっかり宗像の特産品として定着した「宗像産あなご」。平成に入ると、鐘崎漁港ではフグの漁獲量が減少し、日韓漁業協定の影響もあり収益が上がらなくなっていきました。漁を新たに開拓する中で、アナゴ漁が本格化していったことがきっかけです。 元々「ヌタウナギ」を食用や皮革製品材料として韓国へ輸出していましたが、天然のアナゴが一緒に多く獲れることもあり、平成20年頃には国内向けに宣伝を始めました。 アナゴは加工や冷凍がしやすい食材で、5月から11月の旬の時期のものを開きにして冷凍で一次加工していきます。今では宗像市内の飲食店と連携して「宗像あなごちゃん祭り」を開催したり、ふるさと納税の返礼品として鐘崎産の海産物を広くPRしています。 設備投資と組合全体でのマーケテイング戦略 より良い商品開発のために設備投資 現在、水産業全体のトレンドとして高度衛生管理が世界的に進んでおり、市場でも当たり前になってきました。「新鮮で清潔なものを、安全に美味しく食べたい」という消費者の厳しい目もあります。これに対応するため、鐘崎漁港では急速冷凍機械「凍眠」での冷凍技術を駆使。令和5年には「高度衛生管理型新荷捌き所」の開設を目指しています。 かつては魚がゴロンと寝転がり、くわえタバコの競り人が魚を競う風景があったという魚市場。このような風景は次第に見られなくなり、「温度や記録の管理、清潔区域の分別などの衛生管理が整っている市場の魚が、より高く買ってもらえる時代が来ている」と桑村さんは話します。鮮度付加価値を向上させるため、漁業の高齢化・漁船数の減少のなか、経営改善に向けて新たな仕掛けに取り組んでいます。 冷凍技術「アルコールブライン凍結」 鐘崎漁港の「凍眠」で使われる技術は、0度でも凍らないアルコールの性質を利用した「アルコールブライン凍結」。マイナス30度の液状のアルコールの中へ、真空パックに個包装されたアナゴ等の魚をドボン!と漬け込むことで一気に凍らせます。急激に冷やすことで氷の結晶が小さくなり、解凍した時にドリップ(水分)がほとんど出ず、組織の繊維が壊されないまま魚を美味しく保ってくれるというわけです。 刺身の凍結にも利用できるため、フグの刺身などをプラスチックの容器に真空パックし一気に凍らせています。 凍結された真空パック入りのアナゴ 真空パックに入れても形が崩れないものが向いているそう 最近の冷凍技術の進歩はすさまじく、素人目では解凍した際に一度も冷凍していないものと見比べても区別がつかないほどです。しかし、解凍の仕方によっては味が大きく変わるとか。お客様に美味しく召し上がってもらうには「いかに解凍が大事か」を伝えるのがポイントであり、課題だそうです。 マーケティング戦略を駆使し、魚の需給のみならず組合全体の底上げを図る コロナ禍で飲食店が打撃を受けている今、できること 年間5,000トンから6,000トンの漁獲量がありますが、その販路は三つ星ホテル等への提供から、鮮魚・加工用・魚粉・家畜の肥料用などさまざまです。お客様に「鐘崎のものは鮮度・品質が良いから」と選んでもらえるよう、マーケティングの視点からも価値向上に努めています。 例えば、高級品であるトラフグは主に飲食店に提供していましたが、コロナ禍で多くの店が大打撃を受けている今、あまり多くの方に食べてもらえない日々が続いています。そこでお家で食べてもらうため、「フグちりコース」と称して商品を「鐘の岬活魚センター」で冷凍販売したり、ふるさと納税の返礼として取り扱うなど、手に取ってもらえるよう工夫。高級料亭の板前の包丁さばきに対抗するため、スライサーで切った魚をいかにパッキングで圧縮せずに角を立たせ(刺身の切り口が美しい様)、ピッと張りのある状態にするか試行錯誤しているようです。 高級魚はもちろん、ブリやアジ等大衆魚も含め、「どうしたらお客様に選んでもらえるか」「全ての需給階層でそれぞれの購買層に届けよう」と、全てにおいてマーケティングを考えていくことが大切です。 魚の売り先にかかわらず、漁師みんなが力を合わせることが大切 「多くの漁師が組合にいる中で、高いレベルを目指す。一般企業とは違い、高級魚から大衆魚まで全ての魚を取り扱って、段階的に漁師みんなが良い方向に向かっていくからこその協同組合なのです。そこは絶対に譲れません」と宗像漁業協同組合代表理事組合長の桑村さんは力強く話しました。まさに、鐘崎海人としての在り方が受け継がれています。 組合長の桑村さん(撮影時のみマスクを外しています) 漁師の奥様直伝!魚の美味しい解凍方法 鐘崎漁港について勉強したところで、いよいよ魚の美味しさを堪能するため、鐘崎漁港特設マーケットに行ってみました。 宗像漁業協同組合では、土曜日に女性部の皆さんが「いかかなぎ飯」「いか飯」を提供してくれる他、「魚の塩麹」「煮アナゴ」も販売。キッチンカーなどの店舗も日替わりで出店しています。 軽食などが食べられる「タルカフェ」のキッチンカー かき氷などを販売する「オーシャンバンビ」 鐘崎特設マーケットの詳細は「むなかたギョギョ」HP(外部サイト)出店は日によって異なるため、事前に調べておくとGOOD! 今回は、「いかかなぎ飯」「いかめし」「ヒラマサの塩麹」「アナゴの塩麹」「煮アナゴ」を購入しました。 メニューはこちら 「いかかなぎ飯」「いかめし」が食欲をそそります 組合長の桑村さんへの取材の中であったように、「魚を美味しく食べるには解凍がポイント」とのこと。女性部の皆さんにも詳しく教えてもらい、早速、自宅で実践してみました。 魚を美味しく食べる3つのポイント 一晩かけて解凍する フライパンの弱火で5分 蓋をして軽く蒸らす ヒラマサの塩麹・アナゴ 食べる前の夜、魚を冷凍庫から冷蔵庫に移動し、一晩かけて解凍(今回は23時間40分50秒)。解凍したらフライパンの弱火で5分程両面焼きます。蓋をして軽く蒸らしたら出来上がり! フライパンの弱火で焼きます 蓋をして蒸らす 「ヒラマサの塩麹」の完成! アナゴはトースターで片面ずつ2分30秒程度でOKです。 これは美味しい!解凍後の身崩れもなく、身がしっかりしていて、食感に大満足の逸品。塩麹の程よい加減で白米が進みます。 思わず白米が進むおいしさ! 煮アナゴ丼 「煮アナゴ」は21時間1分19秒で解凍し、こちらも弱火で調理。炒り卵をアクセントにネギをふりかけ、煮アナゴ丼の完成です。こちらも味付けが程よく、特にタレなどは追加せずにそのまま美味しく頂けました。家族からも「タレの甘さも丁度良くて、美味しかった」と声が上がり、大満足の一品です。 煮アナゴも弱火で 煮アナゴ丼の完成! 卵とのマリアージュが最高です 美味しく食べてもらいたい!鐘崎の魚たち あまりにも美味しくて、実は1週間後に再び煮アナゴを買いに行きました。その際、女性部の皆さんに自作の魚料理の写真を見てもらうと、「美味しく食べてもらえるのが何より嬉しい」と言って頂き、こちらも嬉しくなりました。 鐘崎特設マーケットは9月末まで開催。ぜひ宗像の海の幸を存分に楽しんでください。 紹介した商品は、特設マーケット終了後も「鐘の岬活魚センター」や宗像市の「ふるさと納税」で買うことができます。ぜひアナゴやトラフグ、イカ等の新鮮な魚を味わってくださいね。 青い屋根が目印の「鐘の岬活魚センター」 ふるさとチョイスHP(外部サイト) https://www.furusato-tax.jp/city/product/40220?category_id%5B%5D=58&incsoldout=1 宗像漁業共同組合HP(外部サイト) http://www.jf-munakata.jp/ 宗像漁業協同組合のFacebookページ(外部サイト) (レポートは原文のままで掲載しています)