校外学習で海の環境を守る大切さを学ぶ~12月8日レポート~ 最終更新日:2022年12月8日 (ID:2741) 印刷 こんにちは、ママレポーターの新田です。9月13日に赤間小学校の5年生が、清掃活動や海のゴミ問題に取り組む方々の話を聞き、「海の環境を守る大切さ」を学ぶ校外学習を行いました。まさに海に隣接する宗像市だからこそ!生の声を聞くことができるのはとても貴重な体験ですよね。学習を通して、子どもたちはどんな気づきを得たのでしょうか?今回は子どもたちの学びの様子をリポートします。 会場となった県立少年自然の家「玄海の家」 宗像の海の現状とは?漁師さんから生の声を聞く 最初に、今回の講師である「シーソンズ」代表の権田幸祐さんからお話を聞きました。シーソンズとは漁師を中心に海ゴミの対策に取り組む団体。持続可能な漁業の推進と海洋環境の保全を行うことにより、「海と人の発展的な共存を達成すること」を目指しています(シーソンズHPより抜粋)。代々漁師の家系に生まれ育った権田さん。自身も漁師として海で漁を行っているなかで、海ゴミの量の多さを日々実感し、危機感を持っているといいます。 シーソンズの権田さん海の中には1億5,000万トンのゴミがあり、それをすべて回収するとゴミ収集車3,000万台分になります。更に毎年800万トンのゴミが海に流出されています。たくさんのゴミが漂っている中、漁に出ると、ゴミがスクリューに巻き込まれる事故や、ビニールゴミの吸い込み事故などの危険があるそうです。ゴミが引っかかって船が動けなくなってしまったら真冬の海でも漁師自ら海に潜り除去しなければならず、それによる事故が起きることも。実体験を交えて教えてもらい、よりリアルに海ゴミの問題を知ることができました。 漂着ゴミの回収を助けるBCロボット 続いて九州工業大学大学院の教授・林英治先生から、ビーチクリーンロボットプロジェクト(以下BCロボップ)やビーチクリーンロボット(以下BCロボット)についてのお話がありました。BCロボップとは「ロボットと市民が協力して海をきれいにする社会」を目指し、九州大学や九州工業大学、宗像市の市民団体などが参加しているプロジェクトです。林先生と研究室のメンバーが開発に取り組んでいる「ビーチクリーンロボット」は、漂着ゴミの回収作業を助ける自立移動ロボット。人が回収した重たいゴミなどを代わりに運び、清掃活動の負担を減らしてくれます。 九州工業大学大学院教授の林先生 漂流物の種類や流出元に着目しながら海岸清掃 お二人の話を聞いた後、さつき松原の海岸に移動し清掃活動を行いました。子どもたちは事前授業でゴミの分別や、ゴミのラベル表記の勉強をしてきたそう。どこから流れついたゴミなのか、流出元にも注目しながらゴミを拾っていきました。 シーソンズの皆さんからゴミ袋を受け取ります清掃活動中には、九州工業大学の学生の皆さんによる、BCロボットのデモンストレーションも実施。実際に販売されている車を改造して作ったロボットで、アクセルやブレーキなどをモーターで動かすことができるよう設計し、作ったそうです。タイヤも大きいので、石の上やデコボコ道も通れていて、清掃活動の大きな助けとなりそうですね。子どもたちが見つけた「浮き」などの大きなゴミも運んでいました。 後ろの箱にゴミを入れて運んでくれます 浮きを運んでいました 私も海岸を少し歩くだけで、燃えるゴミ・ビニールゴミ・ペットボトルゴミなどがあちこちに落ちているのを発見しました。そして、気になったのが白い砂に似つかわしくない色をした細かいプラスチックの破片。これは、海を漂いながら徐々に劣化して小さくなったマイクロプラスチックというものです。 緑のマイクロプラスチック。あちこちに散らばっていて拾うのも大変です 中国語で書かれたプラスチックゴミ。韓国語で書かれたゴミもありました 奥の方まで清掃しに行った子は袋一杯にゴミを抱えて帰ってきました 謎の液体が入ったボトルも(危険物かもしれないので、開けてはいけないそう) 40分の清掃で約50キロのゴミが集まりました 今後の海岸清掃の在り方とは? 清掃活動後には、林先生の元で学び、現在は北九州工業高等専門学校教員の富永歩さんからのお話。「ITによって、人々の生活をより良い方向に変化させる」というDX(デジタルトランスフォーメーション)の考えに基づいた海岸清掃の在り方について教えてもらいました。 こんなことができます! BCロボットに搭載されているカメラやGPS機能活用することで、清掃活動をしている人を認識して後を着いていくことができたり、清掃活動中に海岸沿いを往復し、ゴミがいっぱいになったらゴミ収集所へ運んでくれたりします。 ドローンで海岸の写真を撮ると、AIがゴミの数や種類をカウントすることもできるそう。そういったデータを蓄積していくことで、「いつ、どこで、どれぐらいのゴミが漂着するか」を予測できるようになります。また、ドローンを使うことですぐにゴミが発見でき、清掃活動の効率化にも繋がります。 人は細かいゴミまで拾うことができるけど、重たいゴミを運ぶのは大変ロボットはゴミを拾うのは大変だけど、重たいゴミを運ぶことができるそんなお互いの得意なことを活かして、人とロボットが協働する最先端の清掃活動が、宗像の海岸では行われているのです。 北九州工業高等専門学校教員の富永さん 小さいゴミも拾うことでたくさんの生物が助かる! 最後に再び権田さんから、宗像の海ゴミの現状を聞きました。皆で清掃したさつき松原の海岸は、実は宗像で一番ゴミが少ない海岸で、更に前日、別の小学校が同じ場所を清掃していたそうです。この事実には子どもたちからは驚きの声が上がっていました。また、私も気になっていたマイクロプラスチックについてのお話も。大きいゴミはもちろんですが、マイクロプラスチックのような小さいゴミも海を泳ぐ魚にとっては脅威です。そのまま海岸に放置しておくと、また海に流されてしまいます。海を漂うマイクロプラスチックを魚が食べてしまうと、消化されずにお腹の中に溜まっていきます。すると魚は満腹感を感じて餌を食べなくなり、やがて死んでしまうのだとか。「だから小さいゴミを拾うこともとても大事なこと。きっと、今日皆が小さいゴミを拾ってくれたことで、たくさんの生物が助けられたはずです!」という権田さんの言葉がとても印象的でした。海に出る漁師さんならではの言葉の重みを、きっと子どもたちも感じ取ったと思います。 宗像の海はたくさんの人の力と知恵によって守られている!私たちにできることは? 清掃活動や講師の皆さんのお話を聞いた子どもたちからは、 魚がゴミを食べたりすると危ないことが分かった。これから見かけたら回収したい 海の現状を親にも伝えたい 海に遊びに行ってゴミを見つけたら拾いたい という感想が聞かれました。宗像の海洋ゴミの問題や取り組みを知り、実際に体験したことで、「これから何をすべきか」子どもたちも気づくことができたのではないでしょうか。海のない県に生まれ育って、海に馴染みが無かった私にとっても、海洋ゴミの問題は今回初めて知ったことも多く、取材をしながらでしたがとても勉強になりました。 拾ったゴミでアート制作 ⼦どもたちは今回の清掃活動で回収したゴミを活⽤し、11月12日の「むなかた子ども大学」でアート制作を⾏いました。作品は市内各所で展示予定ですので、お立ち寄りの際などぜひご覧ください。 11月23日から12月中旬まで:海の道むなかた館 11月28日から12月9日まで:宗像市役所、赤間コミセン 11月28日から1月末頃まで:少年自然の家「玄海の家」 (注)展示後は赤間小学校にて展示予定です にぎやかな海をゴミアートで表現 (レポートは原文のままで掲載しています)