「いつやる?どうやる?おうちで性教育~こどもたちを守るために~」講演会~11月19日レポート~ 最終更新日:2023年11月19日 (ID:2773) 印刷 こんにちは、キミママレポーターです。みなさんは、親子で性についてどれぐらいお話しをしていますか?ここ最近の子どもへの性加害の報道などを見聞きする中で、性教育の必要性をあらためて感じている保護者も多いのではないでしょうか?そんな中、9月23日に宗像ユリックスで「いつやる?どうやる?おうちで性教育~子どもたちを守るために~」と題した講演会が開催されました。今回はその内容や性教育に役立つツールなどを合わせてご紹介します。 目次(クリックすると該当項目に移動します) 講師紹介 どうして性教育が必要なの? 日本の性教育の進展を妨げる“はどめ規定”とは? ユネスコが提唱。世界に広がる「包括的性教育」とは? 自分を守る大事な権利『SRHR』を大切にしよう! 子どもに何かあったとき、頼れる存在であるために必要なこと 講演会参加者の感想 性教育に役立つツール紹介 性教育YouTuberによる講演会。子育て世代から祖父母世代まで幅広く観覧 講師は、助産師で性教育YouTuberのシオリーヌ(大貫詩織)さん、MCはタレントのハルさんが担当。会場は、子どもから子育て世代、祖父母世代まで幅広い年代が参加。当日観覧できなかった人も後日動画配信で視聴できるように手配してくれました。(現在、動画の公開は終了しています)シオリーヌさんは助産師としての経験を基に、性に関する情報をYouTubeやSNSで発信。自身も1歳の子を持つママで、子育て中の貴重な時間を割き、この日も神奈川からやってきてくれました。会場から時折聞こえる子どもたちの泣き声にも、「気にしないで大丈夫ですよ」と優しく声かけ。そんな穏やかでママ目線の語り口調で、難しいテーマながらも内容がスッと頭に入ってきました。講演の最後には参加者からのお悩みや質問に、ハルさんと掛け合いを交えながら答えてくれました。 講師のシオリーヌ(大貫詩織)さん 助産師、性教育YouTuber、株式会社Rine代表取締役性教育の発信活動と産後ケアサービスの提供という二つの柱を中心に活動。YouTubeやSNS、書籍など幅広いツールで情報を発信。 会場には子どもから子育て世代、祖父母世代まで幅広い年代が参加 難しいテーマも優しく丁寧に解説してくれ分かりやすかったです! 講演の最後には、参加者からのお悩みや質問にも答えてくれました どうして性教育が必要なの? ここからは具体的な内容についてご紹介します。まずシオリーヌさんが語ったのは、そもそも性教育がなぜ必要かということ。「令和2年度の人工妊娠中絶数の状況について」(厚労省発表)によると、2020年の10代の人工中絶数は年間で1万1058件。1日で考えると30人が、望まない妊娠により中絶を行っていることになります。もちろん、中絶は女性が自分自身の体を守るための大切な選択肢の一つ。しかし心身への負担も大きく、選ばずに済むのであれは選びたくはないものです。また、誰にも妊娠を相談できず、一人で子どもを生んで遺棄してしまうという悲しいケースもあります。いずれにしても、避妊や緊急避妊薬の知識があったり、相談する相手がいたりすれば、違った結果になっていたかもしれません。10代の望まない妊娠は、決して女性だけの問題ではないとシオリーヌさん。そこには日本の性教育の遅れが背景にあると指摘します。 日本の性教育の進展を妨げる“はどめ規定”とは? 日本の小中学校の性教育は、文部科学省が定める学習指導要領に基づき実施されています。「児童生徒が性に関して正しく理解し、適切に行動を取れるようにすること」が目的とされ、月経や受精、妊娠の仕組みなど生殖に関する体の機能を学ぶ一方で、妊娠の経過、つまり「性行為」については教えないものとなっています。いわゆる『はどめ規定』と言われるもので、日本の性教育の大きな妨げになっているそう。あくまでも学習指導要領は最低限の基準であって、これ以上のことを教えてはならないものではありません。それにも関わらず、過去には指導要領を超えた具体的な性教育を行った教師が、議会で問題になったなんてことも。日本は『寝た子を起こすな』という論調が依然として強いそうですが、「そもそも今の子どもたちは寝ていません!」とシオリーヌさん。ネットやSNSが普及する中で、子どもたちは想像以上に性的なコンテンツに触れる機会が多いのだそう。今の子どもたちにとって本当に必要なのは、包括的な性教育だと話します。 意図しない所から性的な情報が こちらは私のスマートフォンのスクリーンショット画像です。息子からゲームの攻略法を調べてほしいと頼まれ検索すると、攻略法の合間に性的なコンテンツ広告が表示されました(画像は一部加工)。意図しない所から性的な情報につながってしまうため、不用意に子どもたちが目にしてしまう場合もあります。 ユネスコが提唱。世界に広がる「包括的性教育」とは? 日本の性教育が遅れていると言われるのには、ちゃんとした根拠があるそう。というのも、性教育には明確な国際的基準があるのです。それはユネスコが提唱する「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」。年齢ごとに細かい学習目標も設けられているんだとか。質の高い包括的なセクシュアリティ教育を提唱し、 健康と福祉を促進、人権とジェンダー平等を尊重、子どもや若者が健康で安全で生産的な生活を送ることができるようにすることが目的になっています。 国際セクシュアリティ教育ガイダンス このガイダンスの項目からも分かるように、性教育は決して特別なものではなく、日常生活の中で伝えられるものも多いと言います。「目の前の人の権利を尊重し、大切にするコミュニケーションが性教育につながります」とシオリーヌさん。包括的な性教育を受けることで、どんな違いが生まれるのでしょうか?ガイダンスに沿った性教育を受けた子どもたちの追跡調査によると「初めて性行為をする年齢が遅くなった」「避妊具を使う率が高くなった」「性行為をするパートナーの数が減った」「危険な性行動をするリスクが減った」など、性に対して慎重な行動をとる傾向が見られたそう。包括的で適切な性教育の重要性を改めて感じます。 自分を守る大事な権利『SRHR』を大切にしよう! 性教育を考える上で、非常に重要な権利についても教えてもらいました。それは『SRHR』(Sexual and Reproductive Health and Rights)。日本語にすると『性と生殖に関する健康と権利』で、かみ砕くと「あなたの体も人生もあなただけのもの。あなたの体と人生を決める権利はあなたにしかない」という意味合いです。当然、この権利は子どもたちも持っているのですが、ともすると、子どもの権利は無視されやすい傾向にあります。子どものことを思ってとはいえ、大人が子どもに代わって意思決定をしてしまうなんてこともしばしば。私も思わず「ついついやってしまっているな」と反省しました。私たち大人に求められているのは、子どもに代わって意思決定をしてあげることではなく、子どもたち自身が後悔のない選択ができるよう、必要な情報を伝え続けてあげることだとシオリーヌさん。大人は子どもたちの『SRHR』を意識しすぎるくらいに考えてほしいと話します。 子どものSRHRを真剣に考えてみましょう 何かあったときの頼れる存在であるために・・・ シオリーヌさんが考える性教育で最も大事な目的は、「何かあったときに相談できる関係性」を築くことです。知識や情報は絵本やYouTubeなどたくさんのツールを利用することもできるし、親が一緒に学ぶことだってできます。ただ何かあったときに(例えば、性被害を受ける、望まない妊娠をする、ジェンダーについて悩むなど)、身近な存在の大人が相談できる相手でなければ、手を差し伸べることができなくなってしまいます。子どもたちにとって身近な大人が、信頼しうる存在になる必要があるわけです。そのために私たち大人はどんな態度、どんな姿勢を示していけば良いのでしょう?2つのポイントをアドバイスしてくれました。 1つ目はジェンダー観のアップデートです 「男の子なんだから泣かない」とか、「ピンクは女の子の色」だとか、無自覚にジェンダー観を押し付けてしまうことありますよね。ジェンダーによって選択肢を決めつけたり、制限したりする姿勢は、子どもにとって信頼できると言えるでしょうか?子ども自身の「どうしたいか」「どうありたいか」という思いを尊重してあげることが重要なんだそう。 2つ目は性の多様性を認めること いわゆるヘテロセクシャル(異性愛者)でシスジェンダー(生まれたときに割り振られた性と自認する性が一致する人)を性的マジョリティ(多数派)と言うのに対し、それ以外の在り方の人を性的マイノリティ(少数派)と言います。『LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア)』という言葉が浸透してきていますが、性の多様性はこれだけに留まりません。性のあり方は非常にたくさんあって、そこに優劣がないことを知ることが大事なんだとか。私たちは故意でなくても、無意識のうちに価値観を押し付けたり、性差別をしてしまうことがあります。だからこそ、ジェンダーや性のあり方について学び、互いを尊重する態度や姿勢を示すことが、子どもたちにとって安心して頼れる存在につながるとシオリーヌさん。まずは私たち大人が性について学び直す必要があると気づかされました。 子どもの性を守るため、2つのポイントを意識しましょう 参加者に感想を伺いました 30代女性 5歳と0歳の男の子の母親です。今後の子どもたちの性教育に役立てたいと参加しました。性教育は性的なことだけでなく、日常生活にも関係しているのだと知りました。親である私から学びを進めていきたいです。 70代女性 ユネスコの国際的な指針があることが分かり、日本の性教育の規制に問題を感じました。また、性教育には子どもとの『会話』が重要だとも学びました。しっかり会話をして、信頼関係を築くことが大事なのだと思います。 講演を聞いて 子どもたちの大事な自己決定権について、認識が甘かったと反省。『SRHR』をはじめ、子どもの権利にもっと敏感でありたいと思います。価値観のアップデートが本当に大事ですね。息子たちは小5と小2で、特に上の子は性についてあらたまって話すことが恥ずかしいお年ごろ。シオリーヌさんのYouTube動画やオススメ書籍などを活用しながら、これまで以上に親子のコミュニケーションを深めていきたいです。(レポートは原文のままで掲載しています) 性教育に役立つツールをご紹介! 性教育に役立つYouTubeや書籍をご紹介します。こういったツールをきっかけに、親子で話ができるといいですよね。 シオリーヌさんのYouTubeチャンネル(外部サイト) 「性の話を、もっと気軽にオープンに」をテーマに、性の知識を学べる動画を配信されています。「YouTubeシオリーヌ」で検索! シオリーヌ(大貫詩織)さんの書籍(宗像市民図書館でも借りられます) CHOICE こどもジェンダー 「CHOICE」 「性」について、子どもへの伝え方に悩む保護者に最適な1冊。 著:シオリーヌ(大貫詩織) 出版:イースト・プレス 「こどもジェンダー」 36の質問を通して「自分らしさ」を見つける大切さを伝える。2022年9月、厚労省社会保障審議会推薦「児童福祉文化財」認定。 著:シオリーヌ(大貫詩織) 出版:ワニブックス 宗像市民図書館がオススメする書籍 からだの性 8歳からの性教育の絵本 とってもわくわく! するはなし 10代の[性の悩み]白書 パンでわかる包括的性教育 「からだの性」 小学校高学年から中学生を対象に、第一次・第二次性徴や性の多様性についてマンガを交えて解説。 監修:長谷川奉延、佐々木掌子 出版:国土社 「とってもわくわく! するはなし8歳からの性教育の絵本」 子どもがもつ性に関する疑問に答え、自分の体について理解し安全を守れるように考える本。 著:ロビー・H.ハリス イラスト:マイケル・エンバーリー 訳:上田勢子 監修:浅井春夫、艮香織 出版:子どもの未来社 「10代の[性の悩み]白書」 10代の女の子、男の子の悩みにQ&A形式で回答。10代の子を持つ親の悩みも収録。 著:思春期外来 in 上野皮フ科・婦人科クリニック 出版:扶桑社 「パンでわかる包括的性教育」 ユネスコ編「国際セクシャリティ教育ガイダンス」に基づき、多様性を柔らかくパンで表現。入学前の子どもに教えたい30項目を紹介。 文:礒みゆき 絵:ニシワキタダシ 監修:浅井春夫 出版:小学館 むなかた男女共同参画協議会がオススメする書籍 タンタンタンゴはパパふたり だいじ だいじ どーこだ? おしえて!くもくん うみとりくの からだのはなし あっ!そうなんだ!わたしのからだ おちんちんのえほん いいタッチわるいタッチ とにかくさけんでにげるんだ 「タンタンタンゴはパパふたり」 オスペンギンカップルを通して、多様な性や家族のあり方を学ぶ。 文:ジャスティン・リチャードソン、ピーター・パーネル 絵:ヘンリー・コール 訳:尾辻かな子 、 前田和男 出版:ポット出版 「だいじ だいじ どーこだ?」 からだとプライベートゾーンを学べる本。 作:遠見才希子 絵:川原瑞丸 出版:大泉書店 「おしえて!くもくん」 日本初のプライベートゾーン教育本。 企画:MASUMI 制作:サトウ ミユキ 監修:小笠原和美 出版:東山書房 「うみとりくの からだのはなし」 自分の体に誰がどんなに触るかは自分で決められること、同意が必要なことを知り、学ぶ本。 作:遠見才希子 絵:佐々木一澄 出版:童心社 「あっ!そうなんだ!わたしのからだ」 自分の体を大切にすること、自分の体や性器の名称、トイレの仕方など小さい子にも伝えやすく描かれている。 編著: 中野久恵、星野恵 絵: 勝部真規子 出版:エイデル研究所 「おちんちんのえほん」 性差、性器のこと、性被害や命の誕生について、あたたかい絵でやさしく丁寧に描く。 文:やまもと なおひで 絵:さとう まきこ 出版:ポプラ社 「いいタッチわるいタッチ」 人を愛したり守ったりする「いいタッチ」と、人に暴力をふるい権利を奪う「わるいタッチ」があることを知り、学ぶ本。 著:安藤由紀 出版:復刊ドットコム 「とにかくさけんでにげるんだ」 身体をさわられた時どうしたらいいか具体例をあげてやさしく教える絵本。 作:ベティー・ボガホールド 訳:安藤由紀 絵:河原まり子 出版:岩崎書店