更新日:2016年8月10日
宗像市では、下水処理水の放流先である釣川の水質保全と水道水源の水質向上のため、富栄養化の原因となる窒素、リンを取り除く高度処理に取組んでいます。
富栄養化とは、湖などが窒素やリンなどを含む栄養塩類の流入により、植物プランクトンなどが異常発生しやすい状態に移り変わっていく現象のことです。富栄養化が進行すると、アオコの発生、カビ臭などの水質障害や、酸素濃度低下による魚介類の死滅、水質の悪化などを引き起こします。
一般的な下水処理の方法は、微生物反応を利用して生物学的に有機性物質の除去を行う標準活性汚泥法と呼ばれる処理方法で、除去できる主な物質は、有機物や浮遊物で、窒素やリンなどの物質はあまり除去できません。
高度処理は、標準活性汚泥法では十分に除去できない窒素、リンを取り除くための処理方法です。宗像終末処理場では、通称でペガサスと呼ばれる硝化促進型循環法と循環式硝化脱窒法の2種類の高度処理法を導入しています。
ペガサスとは
ペガサスとはバイオエヌキューブと呼ばれる包括固定化担体を用いて汚水から効果的に窒素を除去する硝化促進型循環法のことで、宗像市が平成6年に全国で初めて導入しました。
バイオエヌキューブは、微生物である硝化菌を高分子材料のポリエチレングリコールで固め、3ミリメートル角の立方体に成形した包括固定化担体といわれる物で、たくさんの硝化菌が快適に生活する、いわば硝化菌のマンションです。このバイオエヌキューブを生物反応槽の好気タンクに添加することで、硝化菌を高濃度に保つことができ、短時間でのアンモニア性窒素の処理が可能になります。
ペガサスのしくみ
標準活性汚泥法の場合、生物反応槽は好気タンクのみですが、硝化促進型循環法であるペガサスのシステムでは、生物反応槽は無酸素タンクと好気タンクに分かれています。無酸素タンクでは、空気を送らずに撹拌のみを行っており、好気タンクでは散気装置から多量の空気を吹き込んでいます。
以下の説明文章中での化学式の数字は、右下付の小文字表示が困難なため、全角文字で表示していますので予めご了承ください。
- 窒素除去について
窒素の多くは、化学式NH4のアンモニアの状態で無酸素タンクに流入します。
好気タンクでは、包括固定化担体であるバイオエヌキューブに保持された硝化菌が、化学式NH4のアンモニアを化学式NO3の硝酸に変化させます。
好気タンクから無酸素タンクへ化学式NO3の硝酸が戻されます。
無酸素タンクでは脱窒菌が化学式NO3の硝酸から酸素を奪い取り、化学式N2の窒素ガスが作られ、窒素ガスは大気中へ放出されます。
- リン除去について
リンについては、アルミニウムや鉄などの金属イオンを含んだ凝集剤と呼ばれる薬品を好気タンクの出口で加えて化学的に反応させます。
活性汚泥とともに最終沈殿池で沈殿させて除去します。
循環式硝化脱窒法とは
循環式硝化脱窒法は、国内で早くから採用され実績の多い高度処理方式です。窒素・リン除去のしくみは硝化促進型循環法であるペガサスとほぼ同じですが、包括固定化担体であるバイオエヌキューブを利用しないため、生物反応槽の滞留時間がペガサスの2倍必要となります。
一般的な処理方式である標準活性汚泥法との違い
高度処理と一般的な下水処理方式である標準活性汚泥法との違いは、処理後の水質にあります。
宗像終末処理場には、昭和45年に運転開始した第1系統とその後の人口増加により建設した第2系統があり、当初、どちらも処理方式は標準活性汚泥法でした。
平成6年度から順次、高度処理化に着手し、平成22年度には処理水の全量が高度処理水となりました。その前後での処理水質を比較すると、下の表1及び表2のとおりです。全量高度処理化により計画放流水質を達成することができました。
表1
- 平成21年度の処理水質
- 処理水質は宗像終末処理場内の測定値
- 表中の単位は1リットル当たりのミリグラム
平成21年度 | 第1系統 (硝化促進型循環法) 注:高度処理 |
第2系統 第1系列 (標準活性汚泥法) |
第2系統 第3系列及び第4系列 (循環式硝化脱窒法) 注:高度処理 |
計画放流水質 (平成28年度) |
BOD | 4.2 | 5.6 | 2.9 | 9 |
全窒素 | 6.3 | 17 | 8.8 | 20 |
全リン | 0.2 | 2.3 | 0.4 | 0.8 |
表2
- 平成22年度の処理水質
- 処理水質は宗像終末処理場内の測定値
- 表中の単位は1リットル当たりのミリグラム
平成22年度 | 第1系統 (硝化促進型循環法) 注:高度処理 |
第2系統 第1系列 (硝化促進型循環法) 注:高度処理 |
第2系統 第3系列及び第4系列 (循環式硝化脱窒素法) 注:高度処理 |
計画放流水質 (平成28年度) |
BOD | 3.2 | 1.6 | 1.7 | 9 |
全窒素 | 6.1 | 7.0 | 8.7 | 20 |
全リン | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 0.8 |
BOD
生物化学的酸素要求量の略称で、水中の有機物などを微生物が分解するときに必要な酸素の量を表したものです。この数値が大きいほど、その水はより多くの有機物を含んでいることになり、それだけ汚れていることになります。河川や工場排水の汚れの程度を表す指標として用いられています。
注:有機物は、そのままにしておくとだんだん腐ってしまうとても不安定な物質で、プランクトンや台所からの排水、し尿などに多く含まれます
全窒素
水中に溶解している無機態窒素化合物と有機態窒素化合物に含まれる窒素の総量です。
窒素は、窒素、リン、カリウムと並び称されるように植物の三大栄養素のひとつです。
水中の窒素成分が増えると富栄養化と言われる状態になり、植物プランクトンの異常発生の原因となって赤潮が発生する場合が多くなります。
窒素は、し尿、家庭雑排水、工場排水、肥料などに含まれます。
全リン
水中に溶解している無機態リンと有機態リンの総量です。
リンは、窒素と同様に、水を富栄養化する植物の栄養素で、し尿、家庭雑排水、肥料、農薬などに含まれます。
このページに関する問い合わせ先
環境部 下水道課
場所:宗像終末処理場
電話番号:0940-36-4136
ファクス番号:0940-36-4230
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